Etsuro1のブログ

関東南部で寝起きする男の戯言記録

越後五百万石 無濾過生原酒 純米吟醸「隆」

自然破壊は止むことがない、というか・・・今この瞬間に人間の活動に強力なブレーキをかけて一時停止したとしても、効果はなかなか表れないだろう。

 

三十年前、神奈川県の西丹沢にある玄倉川(玄倉渓谷・最近はユーシン渓谷と呼ぶこともあるらしく、その水の色からユーシンブルーとか言われている)に沿って林道を上がっていくと、左手から女郎小屋沢が出合う。トンネル手前に谷に下る踏み跡があったので、それを下りて河原に出る。そして玄倉川の流れを渡って反対岸に行くと、崖の岩の割れ目から綺麗な湧き水が流れ出ていた。それはとても美味い水だった。

Etsuro1は時間があるとその湧き水に出かけて、お湯を沸かしてお茶を淹れたり、弁当を食べたりして谷筋をウロウロしておった。ある日、日没近くまでその湧き水のところに居たんだが・・・ナニヤラ周囲に動物の気配が強くなってきた。どうやら皆さん、この湧き水が目当てらしい。ワガハイはオジャマ虫のようだった。ということでサクサクとその場を退散したのだった。

斜面の踏み跡を上って林道に出ると、しばらくそ~っと草木の間からその湧き水の辺りを観察した。すると、まあ、タヌキ、シカ、イノシシ、がゾロゾロと集まってきたのだ。そして争うこともなく、特に譲り合うわけでもなく、皆さんはその水を飲み始めたのだ。

この湧き水は、西丹沢の彼方此方で沸いている中でも上位にランクされるだろうという水質だったので、動物の皆さんの香味感性とワガハイの感性が一致したようで、それはとても嬉しいことだったな。種を超えて、美味いものは美味いのである!

 

そしてある夏の台風の去った後、その湧き水は斜面の崩壊とともに消え失せたのだ。だいたい割れ目から水が湧いているということ自体、内部では水が浸食しているだろうから、構造的には崩壊の危険があるということだろう。丹沢という山自体が崩壊地を多く抱えているわけだから、もともとそういう地質ということもあるだろう。しかし確実にブナ林は少なくなって、最近のグーグルマップ上では多くの方々のお陰で、そういう状況を画像で確認することが出来る。かつての記憶とは全く異なった尾根道からの展望が、その自然破壊の程度を物語っていると思いますな。

山体の崩壊の証として砂防堰堤は数知れず、ダムへの砂礫の沈殿は、掘ってぇ~掘ってぇ~また掘ってぇ~、と止まるところを知らず。が壊れれば土砂は流出して、その下流川淵を埋めてしまう。そうして魚影は消え、やがては水そのものが枯渇するだろう。

良い水がなければ日本酒は造れない。やがて井戸を幾ら掘っても水が無くなってしまうことも無いとは言えないだろう。

 

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「隆」五百万石

西丹沢の奥地に源を発し、どの様な経緯を辿って川西屋酒造店の井戸に沸き出でるのか?それはなかなか分からないことだが、西丹沢の石英閃緑岩からくる明るい渓相の印象も伴って、この酒蔵が造り出す酒には「硬質」なイメージがつきまとう、というのは、ワガハイの個人的な経験からくることもあるだろう。だが、実際に仕込み水の硬度は決して軟水ではあり得ない。深井戸のタッチが感じられるのだ。ということで、丹沢の男酒と言ってもいいのかもしれない。

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越後五百万石であるか・・・ほくほく線沿いの風景が思い出されますな

これが酒造好適米「五百万石」であ~る!といった感じで、実際の稲を見たことは無いんだが、某所で収穫直前の山田錦のお姿を拝見したことがある。そりゃあ背丈の高いという点で有名な山田錦であるから茎も太いし、なんか野性的というか、獰猛というか、なんだかちょっと不気味ささえ感じてしまうような迫力がありましたな。たぶん、五百万石は山田錦ほどではなかろう。でも酒米である以上、栽培は気難しいところがあるのかもしれないな。

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裏ラベルだねぇ・・・

上画像、撮影地に少々絞り値を開け過ぎましたな。スペックが読めん!以下にあらためて示そう。

 

アルコール分 19度

原材料名 米(国産)、米麹(国産米)

原料酒米2020年度 新潟県産 五百万石100%使用

精米歩合 50%

日本酒度 プラス7

使用酵母 協会701

酸度 1.7

 

醸造過程、特に上槽などでアルコールは蒸散すると思うので、それでアルコール分19度ってぇのは、なかなかモロミの度数たるや、凄いものがありそうですな。生酒であり、さらにはキレが良くて旨味も豊かときたら、そりゃあ杯は進まない訳がない。ということで、気をつけないとかなりの量を呑んでしまいますな。

 

美味い牡蠣を養殖するには森を育てる・・・という話しがあったように、旨酒を造るには森を育てる、ということに結局なっていくんだろうなぁ・・・第二東名よりも旨酒の方が、ワタシャ重要なんだがねぇ。