Etsuro1のブログ

関東南部で寝起きする四捨五入して還暦男の、適当な言語の羅列記録・自称乱学者

意味深長なる「凡愚」・・・恐るべし神亀酒造の感性

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神亀酒造・・・純米吟醸 ひこ孫 凡愚

か・・・という読んで字のごとし意味だが、何故そのような名前をこの酒に付けたのだろうか?謙遜だろうか?道元著「正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)」に凡愚というルーツがあるのだろうか?

で・・・このお酒は凡愚と名付けられているので、凡愚な酒というコトである。その香味は全く派手さがなく、気にもとめずに呑んでしまえば、さして特徴がハッキリした酒ではないので、別にな~んの感想も持たない、という人がおられても、それはあり得ると思うし、ある意味では蔵元の意図通りなのかもしれない。

だが、家呑みで、ジックリとこの酒に向っていると、いろいろ絶妙なところでバランスがとれていることで、角が突出していないというコトが分かる。過剰に濾過してすっぽ抜けて水の如し・・・っていうような酒が、食中において邪魔をしないというワケではないからねぇ・・・薄っぺらい味の酒にはそれ相応の角というものがあって、それが舌先や鼻先に刺さるもんである。

この純米吟醸 凡愚は、日本酒度で稼いだ辛口という味わいではなく、さり気ない酸度で稼いでいる辛口と感じた。だが、熟成効果なんだろうが、その酸のカドがとれていてまろやかな酸なのだ。だから酸が苦手な人でも、問題無く味わえる酒ではなかろうか。

冷や酒、室温では、なんとなくその香味の優れた点がくぐもっている。燗上がりする酒である。燗酒耐性は高めで、ワガハイは50℃の熱燗からイイ感じで楽しんだ。60℃は上げすぎと思った。その辺りは人それぞれだとは思うが、総じて燗酒に向いているという点では、多くの酒呑みの皆さんと意見は一致するのではないか、と思う。

やや、アルコール度数を控えているというのも、呑みやすさに繋がっているのだろう・・・14度以上15度未満というラベル表示だ。熟成期間中にアルコール度数が下がっていく、というのは、熟成のやり方次第だろうがあり得る。

まあ、若干加水して香味を調整しているのだろうと思うんだが、原酒で弱いと同程度のアルコール度数に調整した場合、全くフヌケな酒になってしまうものだ。皆さんも、たまにはいろいろ実験君になってみるのもイイですぞ。様々な日本酒に、加水してみたり、煮切ってみたり、或いは炭酸水で割ってみたり・・・自由に遊んでみるのも楽しい。そんな中で、ありゃりゃ?変なコトやってない?この酒・・・なんていう風に、妙なコトがバレてしまうコトもある。勿論、この「凡愚」にはそうした欠点は見当たらない。

 

ちょっと前の当ブログで書いたんだが、若かった頃、丹沢のあらゆる沢に入って湧水をチェックしていた。汲んだ状態では問題なさそうに思える臭気も、加熱していくと問題が発覚するコトがあった。つまり、酷いものでは何らかの汚水が僅かに混入している可能性がありそうな匂いがしたりするのである。まあ、丹沢であるから山小屋はあるし、年間登山者数は2~30万人と言われているのだから、いくら広い山域であっても湧水の状態には注意した方がイイですな。

さすがにネスラー試薬は扱いが面倒なので持ち歩かなかったが、簡易水質検査キットは使ってたなぁ。で、時代はまだ昭和だったが、丹沢において、ワガハイが最高の湧水だと思ったのは、玄倉川と女郎小屋沢の出合にあった湧水だ。現在は斜面が大崩壊してしまったので、この湧水はない。まったく残念なことだ。

ワガハイは、この湧水の近辺で一日を過ごしたりした。お茶好きの知人や、同じく水にこだわりのある友人と、この湧水で一日楽しんだこともあった。とびきり美味い水だったので、それだけで一日過ごせたんだな。いやぁ~思い出せば、ありゃあパラダイスにいたんだなぁ・・・。

何度も訪れた女郎小屋沢出合だが、一人で出かけ、湧水脇で夕闇が迫っている雰囲気を楽しんでいたコトがあった。すると、辺りになんとなく動物の気配がした。そしてその気配がドンドンと濃くなった。薄暗い草むらの中に光るモノが見えたりしたが、たぶんそれは鹿の目であろうか。なんか・・・ワガハイ、みなさんの邪魔してるのかな?

キャンプみたいに多くの装備を拡げていたワケではなかったから、腰を上げて川を渡り、林道への斜面を登った。そしてしばらく身を屈めて女郎小屋沢出合の湧水ポイントを観察していた。もう、夜の闇が迫っていたが、ワガハイの目も暗がりに慣れていたので、その湧水ポイントにあらゆる動物の影を見ることが出来た。

鹿が多かったな。タヌキのような感じの影も見えた。イノシシもやって来た。みんなここの水場がイイらしい。なんかねぇ・・・ワガハイは嬉しくなってしまった。美味いという価値観を、野生動物たちと共有出来たような気がしたのだ。やっぱり美味いものは鹿もタヌキもイノシシも、美味いんである!

でもねぇ・・・ワガハイは皆さんの水飲みを、相当に邪魔していたんだなぁ。

それにしても・・・ワガハイが去ったら間髪入れずに水場に殺到というのは、一応、ワガハイが鉄砲など持っていない人間だと、分かっていたのかな?ならば、ワガハイは君たちを襲わないんだから、ワガハイの横で遠慮無く水飲んでいていもヨカッタんだがねぇ。

 

ま、この女郎小屋沢の湧水のコトは、川西屋酒造店の「丹沢山・隆」のコトを書くときに紹介した方が、ロケーション的には適しているようにも思うんだが、この「神亀 凡愚」を呑んでいる時にも、あの湧水のコトを思い出したんでね。結局、ス~ッとさり気なく脇役にまわってくれる酒だったから、この酒はいい役者さんなんだよな。そして昔の思い出も蘇らせてくれた。確かに道元の言うところの「凡愚」といってもイイのかもしれない。

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女郎小屋沢の位置 2021年11月24日追加