Etsuro1のブログ

関東南部で寝起きする四捨五入して還暦男の、適当な言語の羅列記録・自称乱学者

「2021年度醸造 純米吟醸 無濾過生原酒 〈赤紫隆〉槽しぼり」・・・噛まずに読めるか?

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隆 越後五百万石 無濾過生原酒

五百万石という酒米は、新潟県で戦前から交配を繰り返していく中で生れた品種だという。戦後の長きにわたって酒造好適米としては主力品種だった。酒造王国新潟を支えた酒米とも言えるんだろう。

そういうワケで、昔はいちいち五百万石などと言うまでもなく、ちょっとイイ酒は無言で五百万石を麹米に用い、掛米に一般米など使っていた酒が多かった。全量五百万石で仕込んだ酒っていったら、結構な高級路線になっていたよなぁ・・・。

現在ではどうだろうか?ワガハイがよく呑んでいる酒蔵の酒の様子を見ていると、五百万石の使用は大きく減ったみたいだし、その代わりに美山錦が多くなった。な~んにも使用酒米の表示が無い酒の場合など、「まあ、これは美山錦でしょうなぁ・・・」という酒が多いからねぇ。

某酒蔵で話し込んでいた時にも、ワガハイのその推定は「その通り!」と蔵元から言われた。たぶん、食習慣が昭和の頃と現在では変わった・・・一番大きな変化は、ナンダカンダで減塩である。昭和の時代、特に明治の人たちが沢山元気だった頃っていうのは、我が祖母もそうだが・・・・冷蔵庫の無い時代の台所をあずかっていたんである。食料保存は乾物やら塩漬けなのだ。そうした食材を無駄なく使い切っていた。

ああ、祖母も晩年は高血圧に悩み、強い降圧剤を服用し続けて脳梗塞で亡くなった。84歳だったなぁ・・・。テレビの情報番組では高血圧対策には「減塩」が重要だと頻繁に言われだし、医者からも減塩を勧められたが、長年の食習慣というのは完全には改めるコトが出来なかった。

祖父もとうとう禁煙出来なかったしなぁ。

そんなコトを思い出してみると、現代ではあの頃に比べれば塩の使用量っていうのは随分と少なくなったと感ずる。ラーメンでも、昭和の時代の味に比べれば減塩になっていると思う。

そんな減塩の背景が、ひょっとしたら五百万石の香味よりもソフトな美山錦へのシフトっていうコトに、ひとつの影響を与えているかもしれない。

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一升瓶に貼られたこのラベルを見逃すことは出来ない

まあ、昭和の時代の料理の味の傾向というのは、やっぱり現在よりもコッテリして濃厚な感じが多かったような気がする。フレンチだって今のコース料理なんか食べると軽いもんなぁ・・・中華だって、今更胃もたれするような料理を出す店は少ないだろう。昔の中華ってぇヤツは、ドスンと胃腸に負荷がかかるものが多かったよなぁ・・・今、あれやったら、やっぱりその瞬間は美味いと思うかもしれないが、後が大変だな。

明治生れ、大正生れは三増酒に両切り煙草、半分酸化した油での揚げ物に強烈な塩分を加え、醤油ドボドボで宴会を繰り広げて高度経済成長を成し遂げてきた。まあ、これって大袈裟でもない。ワガハイが成人した頃、父親と横浜野毛の何処かの居酒屋で将来のコトなど話した時間があったが、猛烈に強い味の店だった。家では母親が減塩料理に腐心していた頃の話だ。

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2021年度醸造 純米吟醸 無濾過生原酒 〈赤紫隆〉槽しぼり

この川西屋酒造店のお仕事になる純米吟醸酒は、五百万石の精米歩合50%である。まあ、半分削れば綺麗な酒になるでしょうなぁ・・・と、簡単に言えないんだよなぁ。昭和の末期だと、精米歩合を上げるのに大騒ぎ。米を精米すると熱を持つのだが、それが宜しくないらしく、スローで磨くとか、ナントカ精米機じゃないとダメだとか、いろいろ言われていた。

詳細は忘れたが、家庭用の精米機で何回も精米して50%はおろか、80%を達成するのも困難だからねぇ。同様に、普通の精米店に置かれている精米機でも無理だからなぁ。精米中に米が割れたり欠けたりするのも、醸造では雑味の原因になるらしいからねぇ。ま、酒米の精米まで見学させてもらったコトはないんだがね。

とにかく、ナニがどの様に改良されて現在に至っているのかはワカランが、高精白技術っていうのも凄い展開があったんだろう。こうして今では呑む機会の少なくなってきた五百万石で醸した酒を味わっていると、かつての五百万石の特徴と思っていた香味の幾つかは、おそらく精米技術に関する洗練度の差から生じたコトだったんだろう、と思ったりする。

そして新潟酒のイメージを形作ってきた淡麗辛口という言い方が、五百万石の一般的なイメージにも纏わり付いていたと思うが、そうでもなさそうだ、と思ったりもするようになった。

充分な米らしい柔和さを備え、尚且つ五百万石ならではの苦味・・・香味空間の中で一定均一の苦味の薄い平面が拡がっていくような、キレに繋がる心地よい苦味・・・穏やかに仕上げられた立香、酸は言うまでもなく綺麗だ。昔の五百万石で醸された酒とは、次元がまるで異なる酒になっている。

川西屋酒造店のお仕事で、例えば阿波山田錦で醸された酒と比較してみると面白いだろう。米の違いがどれだけ香味に違った世界を与えるか・・・メルローカベルネソービニョンのワインが異なるように、はっきりとした米の違いが鑑賞出来るように思えて楽しい。

 

この一升瓶を、例によって4日間かけて呑み終えた。呑みかけの酒を冷蔵保管し、翌日呑んではまた冷蔵庫・・・家庭用の大型冷蔵庫ながら、様々なモノが入った冷蔵庫の隙間に保管するのだから、一升瓶は寝かせて入れるしかない。そういう状態では一升瓶内での残った酒と瓶内の空気が触れる面積が大きいので、空気酸化は縦置きよりも大きくなる・・・つまり劣化の要素が大きくなるワケだが、それでも4日間での香味変化は少なかった。

ある意味・・・硬い酒・・・なんだが、これは熟成が楽しみだ。ワインでも出来の良いものの若いうちっていうのは、硬い印象が強いからなぁ。無濾過生原酒ながら、冷蔵保管していればまだまだ大丈夫だから、数ヶ月後に抜栓するというのもアリかもしれない。

なにせ四日目の状態で香味がようやく開いてきた感じだったのだ。ああ、イイところで酒が終わってしまう・・・(泣)。これからこのお酒を入手される方は、どうか気長に呑んでみてほしい。ユックリと香味が目覚めて行くプロセスを楽しんで下さいな。