我家の定番酒「杉錦」の中でも、最も抵抗なく日常の食卓に溶け込む「玉栄 山廃純米酒」なのだ。
そして「玉栄」という酒米との出会いは、1990年代の「日置桜」にさかのぼる。※ 速醸酛でも山廃酛でも、この酒米で造られる酒に共通すると思われるタッチがあって、それがイイのだ。つまり酸の出方に特徴があるような気がする。
いや・・・酸の質だけを問うても仕方ない。全体の香味の中での酸のあり方なんだろう。それを客観的に、分析的に捉えるコトは難しい。いくら表現を尽くしても虚しい。つまり「玉栄」の味わいなのだ。
それは明らかに「山田錦」とは異なる。絶対に山田では出てこないバランスだろう。
どんなに頑張っても、メルローでピノ・ノワールのワインにはならないように、酒米の種類によって香味は絶対に変わるのだ。
以下リンク先の「北島」も、玉栄だ。
米飯も、「あきたこまち」と「コシヒカリ」では全く違う。それは食べ比べなくても分かるだろう。まして「ササニシキ」ならば・・・この品種は絶滅危惧種か?というほどに作られなくなったが、残念だ。
我家は、ホントウは「ササニシキ」ファンなのだ。確かにモチモチ感が受ける嗜好の多い中では、低アミロ米がウケるのは致し方ない。だが、アミロース多め(ってホドでもないけれど)の品種の食感の楽しみが、なんでもっと広がらないのだろうか?
寿司好きが多いのだから、なんで「ササニシキ」ファンがもっと多くならないのだろうか?
もっとも、栽培が難しいと言われるけれど・・・。
でも、ある米農家の方と話した時、「栽培が簡単な品種なんてない」と語っていた。結局、どんな品種でも手間暇かけないと良い作物は出来ないワケだ。
「玉栄」の栽培って、難しい部類なんだろうか?「若水」よりは使用している酒蔵が多いようには思う。というコトは・・・どういうコトなんだろう?
たぶん、醸造の問題も絡むから、その辺りのコトなのかもしれない。
いままでいろいろ呑んできて、「若水」は攻略出来ずに終わったと思われる酒蔵は幾つもあるから。
とにかく、日本酒の味わいの幅を確保するために、酒米の種類は必要。
いくら素晴らしくても、ピノ・ノワールだけしかない・・・としたらワインも寂しいだろう。それに呑み比べ出来る多様さがあるからこその、ピノらしさ、メルローらしさ、カベルネ・ソーヴィニョンらしさが際立つものだからなぁ。
さて、スペック的に似通っている「北島 純米吟醸 辛口完全発酵 火入」と、この「杉錦」では、どちらがどう違うのか?というと・・・。
改めて「北島」のスペックを下に書きだしておくので、比べてみてほしい。
北島 純米吟醸 辛口完全発酵 火入
近江産契約栽培玉栄 100%使用
精米歩合 55%
日本酒度 +10
酸度 1.8
使用酵母 7号
アルコール分 15度
蔵癖が違うのだから単純比較は出来ないけれど、精米歩合が低めの「杉錦」の方が米の旨味が太く残る分、辛さが穏やかに感じられた。そして抵抗なく呑み進められた。
というコトで、呑み過ぎの危険度は圧倒的に「杉錦」だった。コレはヤバいレベルだった。それに製造年月が2022年7月というコトで、瓶詰出荷から一年過ぎた瓶内熟成酒だからねぇ・・・カドもとれている。
幾ら出来の良い酒で悪酔いしないとは言っても、あまりにも進み過ぎる旨酒っていうのは、やっぱり健康上としては如何なものなのだろうか?自制心っていうのもアテにはならんものだし・・・
まあとにかく、この玉栄で醸された二本の酒を、続けて呑んでみたのは面白かった。リラックス度からすれば、「杉錦」だなぁ。だが、「北島」を呑むと他には戻れなくなるような魔力?がある。どちらも違った点でヤバいレベルの酒だった。
機会があったらこの二本、是非とも入手されたし!
※ 日置桜・・・以下リンク先参照。当時「特醸純米酒」は玉栄だけだったような気がする。現在は、純米酒が玉栄で精米歩合70%、日本酒度+13.0 酸度2.1である。そして生酛玉栄はイイねぇ!