Etsuro1のブログ

関東南部で寝起きする男の戯言記録

恵みの酒・・・「杉錦 誉富士 菩提酛 純米酒 2022BY」

ボダイモト

 

環境が変われば味わいは異なって当然・・・それは人の感性が違ってしまう。若い頃、フランスに行くコトがあって、観光ビザで限界の長逗留をした。そうして写真を撮ったり、スケッチをしたり、田舎の風景の中を彷徨う経験が出来た。すると、日本国内での撮り方や、スケッチでは特に色使いが気が付かないうちに変わってしまった。

帰国して暫くは、そういう感覚を維持していたが、気づくと元の感覚に戻っていた。

とにかく、若い頃は海外に行くと猛烈な違和感を感じ、帰国しても相当な違和感を覚えた。だが、成長し、老化が進むにつれて、何処でも似たようなモンだ・・・と、驚きはなくなってしまった。

 

そうは言っても、日本のチーズはどうもいかん!吟味された素晴らしいチーズがあるコトは知っている。そのすべてを味わい尽くすような優雅な生活者ではないから、大きな声では言えないが・・・

やっぱりフランス産のチーズは味わいが複雑で面白い(理解不能なヤツもあるけれど、それがまた面白い)。どうやっても日本酒では合わないなぁ・・・というチーズがあるから。

昔食べた、確か・・・「栗の葉 or 灰に包んで何かしたチーズ」っていうのがあった。あれは新宿伊勢丹の地下で買った・・・カンタン?とか言ったチーズ屋さんで、本店はフランスだったはず。そのお店は既に撤退しているから買えないのが残念。こういう面白いチーズがねぇ・・・でも、日本酒に合わせようとするとストライクゾーンは狭いなぁ。

たぶん・・・この杉錦の菩提酛だったら、イイ感じに合うかもしれないけど。

Fromager affineur à Paris 7 — Marie-Anne Cantin

 

チーズも酒造りも、ナリユキを見守る・・・それは無管理ではない。状態を見る、そして聞く。

見よ!聞け!である。そして次に備えよ!である。そうして興味深い味わいが生まれるのでは?

 

醪の状態が、イ~~~感じゃね?

・・・ソロソロ、だんべ。段取り・・・すんべ!

 

そして上槽の準備が始まる。「明日の昼飯前には上槽を終えたい・・・」というような願望は通用しない。いつも発酵という微生物の様子のご機嫌伺いだ。

まあ、ワガハイは本格的な酒造りに加わったコトはないが、パン作りも生地の状態のご機嫌伺いだからねぇ。似たトコロがあると思う。

 

でも、やっぱり人間の都合を優先したくなるもんだ。徹底的に管理しないと大量生産が出来ないし。そうしていつも同じようなパンがスーパーマーケットの棚に並ぶようになる。いつも同じ味と食感で安心する。

酒ならば、クリーンルーム内で醸すような状態に近い酒蔵もある。可能な限り自動化して品質を安定させる。地酒とされるブランドでも、もう大手と遜色ない設備だったりするからねぇ。

人が関わるから安定しない・・・熟練度に左右され、職人のその日の体調と気分にも左右される。だから不確定な要素は排除していく・・・コレってナンでもありがちな価値観で、既に新しくもないし、画期的でもないからねぇ。

そしてそれらの酒のテースティングは高評価。だから鑑評会では金賞受賞の常連!だが、落ち着いて味わえば個性は淡くなった。

 

必要以上に磨かれてしまった人工美。

 

この言葉は、ワガハイが1980年代にある現代美術家から聞いた。磨くことに過剰なまでに熱心な日本人、というのだ。そのやり玉に挙げられたのは工芸・・・特に「漆のような油絵具の扱いは我慢ならん!」と語っていた。これは日本の近代絵画批判でもあった。だから「日本では、まずセザンヌは理解されない」というワケだ。

これ、先に述べた日本のチーズのコトに通ずると思う。そしてセザンヌではなく、あの多くの日本人を魅了するフェルメールだって、相当にゴツイ画面だからねぇ。あんなゴチゴチな画面って、なかなか日本人の手になる絵画には見られないから。「油絵具がゴッツイよねぇ~~!」と思ったから。

日本人・・・なんか、ペラい・・・素材としての油絵具、というか物質としての油絵具感が薄い。

 

ま・・・それが日本の個性、ではあるのだろうが。

 

そんな中で、穏やかさの中にもエッジがしっかりとあり、表情豊かな香味の酒は杉錦。

裏ラベル

「菩提酛」とは、上画像のラベルに説明があるとおり。

どぶろくを仕込む時に「くされ酛」から始める場合があるが、まあまあ似たようなコトだろう。

ナニしたって杉錦!ではある。うまい!そして酸でキレる。呑み続けてダレることがない。だから呑める・・・ゆえに杯が進む。

杉錦 誉富士 菩提酛 純米酒 2022BY

だが、菩提酛はやっぱり菩提酛の個性として、生酛や山廃酛とは違った味わいになっている。人工美とは程遠い香味。

いろいろな積み上げと周囲を整えながら出来た、という恵の酒だと思う。ナニがなんでもこ~ゆ~酒を造るぞ!という押し付けの酒造りではない。きちんと奉納出来る酒だと思う。

大量生産品の奉納・・・?

(そういうのを見るコトもあるけれど)

まあ、ナンでも手作り感があればよし、というワケではないけれど。