米を磨くほど酒の味が良くなる・・・なんて単純な言い方がされていた時代があった。精米機の性能の問題もあったようだが、現在よりも米を磨くのは難しかったらしい。そりゃ、現在だって神経と時間をつかう仕事が精米だとは思う。
簡単に精米って言うが、なかなか奥の深い世界らしいからねぇ。
精米について、お米屋さんの話しを聞いたコトがある。状態の良い米を得るには、保管状態が大切というのが大前提として、飯米の精米でも用いる精米機の性能と、削り加減の微調整があるらしい。ナンでも、その人は飲食店に入ると黙々とご飯だけを食べ続けてブツブツ言っていた・・・
「削りすぎだ!」
とか、
「熱が入っちゃったなぁ・・・」
とか・・・とにかくブツブツ言っていた。そして全部一善食べきってからオカズだけを黙々と食べていた。米のコトしか興味がなかったんだろうなぁ。
精米すると米は熱を持つ。ソレを嫌って酒米の精米では凄く時間をかけるらしい。さすがにワガハイも酒米の精米までは見学したコトがない。ここからは蔵元から聞いた話だが・・・
「時間がかかるから、精米に掛る費用も・・・、精米仕立の米は吸水が急激だから少し休ませてから使う・・・」
そんな話しを聞いたコトがあった。
そう言えば、蕎麦粉も石臼で挽くのは熱の発生が抑えられるからだと言うし、しかもスローで挽くと聞いた。そして挽き立ての蕎麦粉は吸水が急過ぎるので、一日は休ませる・・・とも聞いた。
挽き立ての小麦粉でパンを作るのも同様の理由だろうが、やりづらいと聞いた。そう言えば、コーヒーも焙煎仕立ての豆は、抽出時に急激に膨らみ、味わいも少し荒れるコトがある・・・とか聞いた。コーヒーも翌々日位がイイ感じだとか。
まあ、それぞれが使う原料の品質や、機材の性能や状態によって変わってくるコトでもあるかもしれないが、ちょっと休ませるというのが必要だというのは、なんか感覚的に受け入れられるように思う。
ワガハイ自身も、ナニガシカの作業をしたら一休みさせてもらいたいからねぇ。休みすぎても駄目なんだろうが。
というワケで、この酒の話しになる。
日置桜は鳥取県の美しい風景の中に酒蔵を構えている山根酒造場が醸す美麗な酒だ。ワガハイ、かれこれ20代後半から時折呑んでいるので、随分と長く呑んでいる酒だ。とにかく物腰の柔らかな香味だ。しかし呑み疲れるコトなく盃が進むのは、柔和な酸が香味の背景に続いているからだろう。ブラインドでテースティングしても、多分他の酒と混在していても「日置桜」はハッキリと分かるのではないか?
まあ・・・「丹澤山」も「杉錦」も群れの中で埋もれない個性を持っているが・・・ワガハイが愛飲するこの二つの酒蔵のフィーリングとも違ったかたちで、「日置桜」も好感度の高い酒だ。
というコトは、実は大して重要な内容ではない。この酒は全量「山田錦」で仕込まれていながら「普通酒」と表記されているコトだ。その理由は裏ラベルに書かれてある通り。
裏ラベルによると、等外米を30%仕込に使っているのだな。その影響だろうか・・・「日置桜」にしては僅かなエグ味が残る香味になっている。だが、嫌な印象ではない。むしろ香味空間が広がるような感じでワガハイ的には好みだ。そしてエグ味っていうのは雑味ではあるのだが、後をひかないので口中がスッキリとする。
物腰の柔らかさのなかに酸度2.3が効いている。これまた柔和な酸!日本酒度+10.3とあるが、それ程の辛口を感じない。かといって甘さも感じない・・・「ふくらみ」「まろみ」のような感触が伝わってくる。
結果・・・盃は進んでしまう。呑みすぎ注意の旨酒だった。
コチラも山田錦の等外米仕込!
皆既月食の撮影は、この「日置桜」を呑んでいたのだった。
以下リンク先で、「ちょっと面白い日本酒を見つけたので、一昨日から少しずつ呑んでいる。とても美麗な普通酒なのだ・・・」と書いたのが、本日の「日置桜」なのだ。
以下リンク先のような「日置桜」も呑んだなぁ・・・
なんか・・・リンクが多いケド、いい思い出だねぇ。