当ブログ2021年3月9日で書いた「綿屋トヨニシキ」である。ついに入手した。
念願の酒を店頭で見つけた時は、至福の時である。だが、あまりにお久しぶりの対面なので、ちょっと不安もある。果たしてかつてのような酒だろうか・・・あまりに年月を経ているので、ワガハイも年老いた。酒の方も変わってはいないだろうか?と。
そして、それはお互い変化しているに決まっているのである。酒蔵の酒造方針は常に更新されているし、世の中の香味に対するニーズも変化し続けている。やはり酒にも流行というのはあるな。
かつては吟醸香プンプンの大吟醸がもてはやされていた。そりゃあ、ダレでもはじめてそうした酒を口にすればビックリするだろう。先ずは9号系と山田錦の組み合わせで大騒ぎだったねぇ。何処の蔵でも9号で醸さないと商売にならないんじゃないか?という程の流行だったな。それを思えば、最近は立香に関しては一応に抑制傾向が流れみたいだ。そして、酒造工程での都合もあるのだろうが、泡無し酵母の使用が増えた。この綿屋も協会701号酵母ということで、7号酵母の泡無しタイプを用いている。
正確に・・・あるいは精密に比較出来るならば・・・それはまるで実験室のような環境での醸造であり、分析するかのようなテースティングになるだろうが、7号と701号は微妙にして決定的に違うだろうな。そして9号と901号も。
ま、どの様な協会酵母があるのか興味津々の方は、公益財団法人日本醸造協会のHPから清酒用アンプル酵母・スラント酵母のページを参照されれば、と思う。様々な酵母の特性が簡単に説明されている。そしてワガハイが気になるのは・・・
会員価格(税込)※非会員は2割増しとなります
という記述だ。2割増し・・・ワガハイが購入しようとすると2割高なんだな。ま、全く酒造に関係ない人間が購入申し込みをして、ナニも言わずに売ってくれるのだろうか?やったことがないからワカランがな。
あ・・・購入方法のページがあるんだが、基本的に酒造免許が必要みたいだ。ただし、製菓、製パン、しょうゆ製造など酒税の保全上支障がない・・・という条件なら、酒造免許が無くても購入可能みたいだ。因みに協会酵母はヤマト運輸にてお届けらしい。
ムムム・・・これだけの情報でも興味深くてワクワクするワガハイは、なんか妙なところでオタクだな。でもまあ、個人的に家庭内で作るパンに、協会7号酵母を使ってみたい、なんていうことに関して、日本醸造協会は付き合ってくれるのだろうか?
注文は、注文書をダウンロードしてFAXなんだそうだ。今時、FAXである。まあ、辛うじて我家にはFAXはあるが・・・ん~~~・・・・?ま、問い合わせるのも止めておくか。
やるならば昔やったように、酒粕から酵母を培養してパンを作るか?その時は9号系だったな。ま、出来ましたよ・・・パン。ただ、リーンな生地には厳しかったな。発酵がナカナカ進まない。そもそも数回、種つぎをして発酵を安定させないとパン生地はしっかりと膨らまなかったですな。手間を考えるとザワー種を起こす方がいいや・・・ってなりますな。
発酵というのは面白いんですな。で、本当はドブロクやりたいワケだ。ま、隠れて作って自分だけでヒッソリと楽しんでおれば、普通はバレないだろうねぇ・・・でもワガハイのような人間だったら密造しているって分かっちゃうだろう。
「あの家の換気扇から、怪しい発酵臭が漂ってくる・・・」
そして丁度良い加減でドブロクが出来上がったころに、そのお宅の呼鈴が鳴る・・・その家人が応対に出ると、そこには利き猪口を持ってニタニタしておるワガハイが立っておるだろう。密告などしない。つまみも用意して立っておるだろう。そしてそれは税務署員よりも気持ち悪い出来事かもしれん。
で、合法的に発酵の楽しさを享受するとなるとパン作りになる。パン生地の発酵では明らかにアルコール発酵が起こるからな。まあ、その香りはたまらなく良いもんですな。まあ、怪しいですな・・・発酵するパン生地から漂う香りに包まれて、ニンマリしている初老男一人の図・・・という具合に、ワガハイの場合はなってしまう。
ああ、やっぱり個人醸造を認めて欲しいですな。税務署に申請して、この際、若干の納税は諦める・・・まあ、売らなければ納税の必要があるのかどうかワカランが、税収が減るという可能性からすれば、その分を納める、というのも一応はあり得る理屈だろうか。
個人が作ったところで、プロが作るような美酒は出来ないだろう。そもそも精米がど~にもならん。飯米で作るしかない。今、我家にあるのは「ひとめぼれ(岩手県産)」だ。素人がやれる範囲は、ひとめぼれでドブロク・・・ま、そんなところだ。吟醸酒はおろか、特定名称酒のカテゴリーでは作れないな。家庭用の精米機をいくらぶん回しても精米歩合は綺麗に上がらないからなぁ・・・ポリポリ。
で、トヨニシキで作った特別純米酒「綿屋」の話になる。
トヨニシキという米は、ワガハイが子供の頃では神奈川県でも聞いたことのある稲の品種だったが、最近は全く聞かない。「キヌヒカリ」や「はるみ」、そしてやはり「コシヒカリ」である。だから、トヨニシキを炊いて食すという機会はなかなか得られない。ま、気付かないうちに子供の頃に食していたのかもしれない。
ということで、トヨニシキという米の味や食感といったものはワカラン。が、データ的にはザッとこんな感じの米だ。
水稲農林199号(旧系統名 奥羽269号)
交配 母:東北78号(ササニシキ)父:奥羽239号
認定年月 1969年05月
育成機関(認定時) 東北農業試験場
資料:農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター
まあ、ササニシキ系の特徴を思えば、アミロペクチン系(極端な例ではミルキークィーンみたいな)の米ではないだろう。つまりパラパラとした炒飯に向いているような米の傾向に近いのではなかろうか?ならば、麹を作りやすいだろう。モチモチとした食感の米は、麹を作りにくそうだからな。酒米は、山田錦もそうだが、まず間違いなくアミロース系の米だよなぁ・・・
一日目・・・さて、問題の「綿屋」のトヨニシキによる特別純米酒だが・・・抜栓しても香味がなかなか開かない。実に硬い印象・・・が長く続く。まあ、揉んでみたり、暖めてみたり、いろいろやり方はあるが、余計なコトはせずにジッと静かに、チビチビやりながら経過を楽しんだ。そしてとうとう1日目は開かず・・・まだ蕾、といった印象のまま一升瓶は冷蔵庫保管。
二日目・・・やや開くものの硬さが強い。ナカナカ頑固な酒だ。でも、こういう酒っていうのは造りはしっかりしているんだよな。もっと熟成させてから抜栓しても良いのかもしれない。でもねぇ・・・一升瓶を冷蔵庫保管で、あと半年とか一年熟成となると、冷蔵庫をもう一台購入しないといけん!それは・・・もう我家には置き場所がないねぇ。
三日目・・・やや開いてきたが硬さは残る。酸は速醸だが表情のある酸であることが分かる。これは良いコトだ。香りはいたって協会701号らしい落ち着き。もう少し硬さがとれれば、間違いなく癒やし系の酒だろうが・・・硬さを克服出来ず、香味もイイ感じで開きかけたところで酒が無くなってしまった。でもまあ、呑めちゃうというコトですよ!硬い硬い!!と言いながら、呑めちゃうんです!こりゃあ、しっかりとしたイイ造りをしている酒っていうコト間違いなし!でしょう。
次回、入手した際は、ちょっと攻略法を考えてから抜栓しようと思いましたな。なかなか面白い酒ですな。なんか、腕のいい職人が作ったタンスを思い浮かべながら呑んでいた。引き出しを閉めると、別の段の引き出しが出て来てしまう・・・全ての引き出しを収めるのには手間が掛かる・・・みたいな、しっかりとした造りの酒だな。