Etsuro1のブログ

関東南部で寝起きする男の戯言記録

2023年度醸造 純米吟醸 無濾過生原酒 〈白 隆〉 槽しぼり 仕込5号・・・協会701号酵母

槽しぼり 仕込五号 無濾過生原酒 +11 二〇二三年度醸造

本日の日本酒は、1月22日(以下リンク先)で書いた無濾過生原酒と呑み比べると、面白いかもしれない。どちらも足柄若水精米歩合55%の純米吟醸だ。仕込タンクは当然ながら違うし、その仕込日時も違っているに決まっている。そうした差異は、厳密な実験ならば問題となるけれど、そのアタリは実験ではないので置いておこう。

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この二つの酒の一番の違いは、アルコール発酵の為に働いてもらう酵母さんの違いだ。それは、熊本酵母醸造協会701号酵母だ。

さて、熊本酵母の特徴というのはどの様なものなのか?それは既に以下リンク先で少し触れている。

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だが、詳細は本家に尋ねるのが良いので、興味津々の方は以下リンク先をご覧くだされ。もっとも、その説明の要は熊本県酒造研究所では今でも、この「きょうかい9号酵母」とは別に自社で保存・管理された「熊本酵母」を頒布しています〉というトコロだけれど。

www.kumamoto-sake.com

ワガハイ的にはまだ、熊本酵母がどの様な特徴のある香味特性なのか把握出来ていない。それを会得するには、川西屋酒造店さんのお仕事以外の酒も、幾つか呑んでみなければ釈然としない。要するに協会9号酵母だと言ってしまえばソレまでだが、あえてソコを「熊本酵母」で醸しているトコロをみると、そこには微妙にして決定的な違いがあるからなのだろう。

その違いこそ、川西屋さんのコダワる点なのだろう。

普通に考えれば9号の泡なし株の901号を使えば良いんじゃね?ってなワケなのだから。

実際、協会7号を使わないで701号(7号の泡なし株)で醸しているのが、本日の酒だし。

隆(川西屋酒造店)

泡なし株とは何ぞ?というと、仕込初期に発酵力が旺盛になる時がある。その時に猛烈に泡が出て、醸造タンクの液面が上がってくることがある。それを高泡(たかあわ)と呼ぶ。綺麗な酒を造ろうとすると、概ねこの高泡を適度に抑えてあげる為に、タンクを冷やして酵母の活動を抑えてやる。

タンクの冷却については、いまではだいたいどこの蔵でも、そういった装置を持っているので、もの凄く手間暇が掛かるというもんでもないだろう・・・昔に比べればの話しだけど。

だが、高泡の面倒くさいトコロは、後々の掃除に問題が起こってくる。吹いた泡の跡を綺麗に掃除しておかないと、そこから不良発酵が始まる原因となってしまう。それは酒の香味に悪影響をもたらす。そのお掃除の手間が、実に大変なんだそうだ。

蔵人の負担を少しでも減らし、労働環境を改善していくのも、持続可能な日本酒醸造の重要な問題なのだ。

だが、たぶん・・・熊本酵母は、泡アリなんじゃね?と、思ったりするけれど。そこは蔵人のコダワリで、労働を受け入れたのかもしれない。

2023年度醸造 純米吟醸 無濾過生原酒 〈白 隆〉 槽しぼり

では、その味わいにおいて、熊本酵母の足柄若水純米吟醸と、協会701号酵母の足柄若水純米吟醸の、ナニがどの様に違うのか?というと、抜栓仕立ての強烈な新酒感は熊本だ。それは前にも書いた通り、槽から流れ出る新酒に近い、驚愕し、誤解を生じかねない危険な酒だった。

本日の協会701号の純米吟醸は、ソレに比べればおとなしい香味。フレッシュだけれど手強くはない。なんの注意書き、但し書きも要らずにそのまま抜栓して頂けばよい。

プレゼントするなら701号だな。いちいち説明しなくて済むから楽だ。とは言ってもそこは川西屋さんのお酒、荒ぶる新酒感は堪能出来る。

 

コレはワガハイの推測に過ぎないが、発酵力では泡なし酵母の方が穏やかなワケだから、そうしたパワー感が熊本の方が残っていたんだろう・・・一升瓶の中でもね。

というコトで、酵母さんのパワーを受け取ってみたい人には是非一度、熊本酵母の「隆」を手にしてもらいたい。落ち着いて和みながら新酒の季節を堪能したい人は、協会701号の「隆」をお勧めしたい。