Etsuro1のブログ

関東南部で寝起きする男の戯言記録

ふた夏越しの秋あがり 丹澤山 純米酒 若水70 火入 2020年度醸造

ふた夏越しの秋あがり 丹澤山

寒い季節は雑菌の繁殖を抑えやすいし、酵母の活動で醪温度が上昇するのを抑えやすいから、日本酒は寒い季節に仕込むコトが行われてきた。また、蔵人の多くが季節雇用で、農閑期の出稼ぎ労働者だったという事情もあるという。

寒造りは、日本酒の醸造では常識的なスタイルと思われるのが普通だ。だが、古くは寒造りばかりではなく、酒が足りなくなれば夏でも仕込んでいたみたいだし、古式の醸造法には仕込温度が低いと都合の悪い技法もあるらしい。

でも現在は、温度管理の出来る規模の大きな酒蔵ならば四季醸造をしているから、いつが新酒でいつが熟成酒の時季なのか・・・なんて意味を成さないってなコトもあるケド。

そうは言っても、中小規模の酒蔵は現在でも寒造りが多い。冬に作り終えた酒は濾過や瓶詰めや熟成管理などで春夏を過ごし、秋になると味わいが安定してきた酒を「秋あがり」と称して売り始める。これは新酒の時季の次に楽しみな季節のお酒だ。

 

昔は軟水で仕込んだ酒は「秋あがり」せずに「秋さがり」する、なんて言われた。現状ではそんなコトもないけど、やっぱり硬水で仕込んだ酒の方が「秋あがり」への期待感が高まるっていうのは、昔を知る老人の感覚なんだろうか?

そして長いこと呑み続けている「川西屋酒造店のお仕事」も、ココは中硬水と公称しているが・・・ワガハイ的には相当に硬度高めの仕込水だと思っている。かなり以前となったが、仕込水をテースティングした時・・・エビアン程ではないけれど、硬度の高い水特有の舌触り感があった。灘水ほどの高さではないかもしれないが・・・。

そうした影響なのだろうが、まだ昭和だった頃から「丹沢山」のお酒は、時にゴリゴリとした硬質な印象の香味になっていた(それもまた面白く美味だった)。その硬さはひと夏を越しても緩和されるコトがなく、新酒が出始めた頃、新酒を購入するよりも昨年度醸造の酒を購入した方が楽しめる・・・みたいな時もあった(これは昔の話だからねぇ)。酒販店の売れ残りを探したりしたコトもあった。ソレがまた美味かった。

今では、新酒は新酒として楽しめるお酒になった「丹沢山・隆」だが、昔はヌーヴォーとして熟成傾向を占う感じで呑んでいたからなぁ。

丹澤山 若水

酒販店でこのラベルを見つけて、

「そうだそうだ!まだ丹澤山の秋あがりを呑んでなかったな。」

と、イソイソと購入した。一升瓶を入れたエコバッグはクルマの後部座席に置いて、シートベルトを絡めて略式の安全策を講じ・・・もう、帰路の運転はウキウキだ。浮かれすぎて事故らないように気を引き締めようと注意する位だ。

なにせ、事故ったら、この旨酒が呑めなくなるからねぇ。運転はより慎重にならざるを得ない。ワガハイ、美味いモノを購入した帰り道の運転が、一番慎重な運転を心がけているような気もする。

瓶の中の酒を出来るだけ揺らさないように・・・とかね。

勝沼にワインを買いに行った帰り道は、御坂峠や篭坂峠を越えないように高速道路を利用するのも、峠道でワインが強く揺さぶられないように、と、一応配慮するのだった。それがどれだけ効果があるのかはワカランけど・・・気持ちの問題に過ぎないかもしれないが。

裏ラベル・・・2022年9月出荷
ラベルが傷まないように透明フィルムが貼られていたが、結局結露で上のような状態にはなる。

「ふた夏越しの秋あがり」という、一升瓶に貼られたラベルを見たとき、

「川西屋酒造店のお仕事だなぁ・・・さすがだなぁ・・・こりゃ美味いよねぇ・・・」

と、ココロはヘラヘラ状態。ありがとう!2回の夏の乗り越えて上がってきた香味なんだねぇ。でも、たぶん、それでも熟成感よりも若さが際立つような酒なんじゃない?という期待と予想だった。

そして抜栓!期待は裏切られなかった。まだまだ若い!若干の硬さを感じながら呑み始めた。精米歩合は70%と書かれているが重さやダルさは一切感じられず、ほのかに吟醸香っぽさも感じられる。「精米55%で香り抑えめに造りました」といわれても騙されそうな雰囲気があった。このラベルに嘘偽りはないと思うケド。

 

結局、4日間かけて夫婦で呑んだ。マイドのコトだが抜栓2日目と3日目の香味が断然良かった。適度な柔らかさも加わって、杯を抑えることに苦難した。コレは油断したら呑みすぎてしまう。そして牛肉系(牛脂)に結構合う。

まあ、最初から2年熟成させるコトを狙って造ったのかは知らん。出荷時期を探っていたら今のタイミングになったというコトなのかもしれない。だが、そのタイミングを計るのも醸造家の大切なお仕事だからなぁ。

 

少し前に書いた「相模灘」の秋あがりよりも、この「丹澤山」の方がフォーマルな印象でジェントルな香味だ。口に含むと奥行きを感じられる。一方、「相模灘」はイイ感じの香味で、大人数で騒ぎながら呑むフィーリングの酒だなぁ。コレはシチュエーションに応じた使い分けの「秋あがり」2本だな。

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