バブル期の記憶だが、東京の銀座3丁目、昭和通り沿いに喫茶ルノアールがあった。ひょっとしたら4丁目だったかもしれないが、銀座通りから松屋通りを歩いて昭和通りに出た近辺にあったような気がする。あの頃、よく打ち合わせや待ち合わせに使った喫茶店だった。
そのルノアールの前辺りの昭和通りで目撃したコトが、本日の話題である。歩道上に力士が3名いた。ワガハイは相撲に興味が薄いので、ナンていう力士なのかも分からなかったが、若干の人だかりがあった。どの様な経緯でそこに居たのは知らんが、そこからその3名はタクシーに乗って日本橋方向に消えて行った。
普通のタクシーに3名の力士・・・後ろに2名、助手席に1名。
タクシーは、ひとり乗り込む度に激しく揺れ、サスペンションはペターンと沈み切って、おまけに全員乗車時には左に大きく傾いていた。
ワガハイ的には、あの大きな身体を、通常のクルマの間口から滑り込ませられるコトが不思議な感じがしたが、さすがソコは相撲で鍛えた身体能力であり、柔軟性はワガハイの比ではないコトが分かった。
な~~んか、車内空間が全く無い感じ・・・窓は全開にされた。あれ、エアコンなんて効かないだろうし、窓を閉め切っていたら圧迫感に耐えられないんだろう。
で・・・とにかくタクシーは走り去っていったんだが、その後ろガラスを通して見える有様といったら・・・力士2名で完全に塞がれた図、になっていて、なんだか漫画みたいだった。
「よく乗れたなぁ~~」
とか、
「タクシー壊れないか?」
などと言う声も周りから聞かれ、その様子にちょっとした笑いも起こった。ワガハイも、何だか凄いコトを目撃してしまったように感じた。
ただ、力士3名がタクシーに乗り込んで走り去っただけ、なんだが。
その頃、JALの機長さんと話す機会があった。その方は、その頃のコトだから航空機関士が乗務していた頃の747の機長さんだったワケだ。
彼が言うには、飛行機を飛ばすコト自体は簡単らしい。ナンの訓練を受けなくても、ワガハイが彼と操縦席に座り、機長さんの言う通りにフラップを下げ、スラストレバーを操作し、操縦桿を引けば、747は離陸する・・・というのである。
ま、そりゃあそうかもしれないが・・・
「じゃあ、着陸は言う通りにすれば出来るんですかねぇ?」
というと、
「着陸は無理だな」
ってなコトだった。飛ばせても降りれない・・・そういうコトらしい。だが、機長はこう言ってきた。
「君は縦列駐車って出来るかい?」
ワガハイ、まあまあ縦列駐車は下手ではない、と思う。すると、
「私がクルマの運転席に座って、君が助手席から指示して縦列駐車出来ると思う?」
変なコト言うなぁ・・・と思ったんだが、機長さんは縦列駐車が苦手なんだそうだ。そもそもクルマの運転は苦手だという。もっぱら奥様の横に乗せてもらっているらしい。という話から導かれた結論は・・・
縦列駐車が出来るならば、飛行機の操縦免許を取得する能力はある!
という話だった。
ホントかいな?
ただ、機長さんが言うには、飛行機の方が圧倒的に管制されていて安全装置が進んでいるから、自動車ってその点で怖いコトもある、と語っていたなぁ。それに、信号無視とか、極端な速度違反といった法規違反をするような輩は、まず空を飛んではいないらしい。
圧倒的に野蛮な巷の道路事情の中で、クルマを運転するなんて行為は、私には出来ない・・・なんて言っていた。タクシーやバスの運転手の方が、圧倒的に難しいと思う、とも言っていたなぁ。
で・・・先日(10月16日)のニュースで、13日に開幕した「かごしま国体」では、相撲競技が奄美大島で行われました・・・とな。それでおよそ460人の屈強な男たちが奄美大島へ向かうワケだが、機体の重量制限で全員搭乗が出来なくなった、というワケだ。
そのニュースを聞いた瞬間、あの昭和通りでの力士3名乗車のタクシーの様子を思い出した。あれも絶対重量的にはオーバーだっただろう。定員以内ではあったけど。
例えば、力士3名を箱根の山の上で乗せて、小田原か三島まで行くとすると・・・ブレーキが一発で終わったりしてねぇ。大観山経由で湯河原まで下ろうとしたら、途中でペーパーロックとか、フェード現象とかやってアウトになるだろう。エンジンブレーキなんて、ほとんど効かないんじゃなかろうか。なにせ、積載オーバーのトラックの危険性と同じ状態になるだろうから。
つまりそういうコトが出来ない相談になっているのが、飛行機ってぇ乗り物なんだな。だけど、タクシーの場合や路線バスに力士がギチギチに乗ってしまうとしたら、ソレって乗車をお断り出来るんだろうか?安全上の理由で急遽増便するので、ココでしばらくお待ちください・・・ってなコトは出来るんだろうか?
ここで幾らウダウダしていても答えは出ないけれど、やっぱり恐るべきアスリート!相撲はなんか、凄いねぇ。