Etsuro1のブログ

関東南部で寝起きする男の戯言記録

丹澤山 山廃純米酒 凛峰・・・「沈黙」の瞬間のある香味空間

遠藤周作「沈黙」は、読み込む程にいろいろ出てくる・・・叩けばいくらでも埃が出てくるみたいだねぇ。

 

昔は天気が良いと布団を外干しして、直射日光に当ててダニを殺し、細菌類を殺し、そして布団たたきでバンバンぶっ叩いて取り込んでいた。そういう時代は長いコト続いていたのである。子供の頃に手伝いで、ワガハイがチョロッと叩いて家に取り込むと、叩き方が足りない、と母に言われ、とにかくアチコチの家から布団をぶっ叩く音が聞こえた。

ある日、丁度今頃の季節・・・夏休みだったと思うのだが、ワガハイが思いっきりぶっ叩いていると、それに張り合ってぶっ叩く音が聞こえた・・・なのでその挑戦を受けてワガハイは更にぶっ叩いた・・・すると相手も更に強力にぶっ叩いてきた。布団ぶっ叩き合戦が始まると、何処かからそれに参戦する音が聞こえ始めたりした。(ワガハイはアレルギー体質なので、日本手ぬぐいで鼻と口を覆い、風向きを考えて布団ぶっ叩きを行うというのが所作であったな。)

古き良き時代・・・良き時代だったかどうかは何とも言えないが、今では布団をぶっ叩く音は聞こえなくなった。その行為が理に適ったコトではなく、かえって布団の綿を破壊して、際限なく埃を生じさせてしまうというコトが理解されてきたからだろう。そうして、いつの間にか藤(ラタン)で出来た布団叩きという道具も見られなくなった。そして布団は掃除機を用いる方が良いとされ、レイコップ布団クリーナーがテレビショッピングで盛んに売られていたな。

藤で出来た布団叩き・・・あれを作っていたところはど~なったんだろうか?急速に需要がなくなって廃業したのだろうか?あるいはうまく業種転換出来たのだろうか?時代の転換点というのは、ある日突然現れて、短い準備期間しか用意されずに今までの常識はひっくり返る・・・そういうコトを、何度も経験したし見てきた。そして、後戻りは大概はおこらない。

 

さて、「沈黙」は続く・・・いや、「沈黙」ネタは続く。

昨日の内容では、「切支丹たちの唄」と「般若心経の真言」を並べてみた。真言・・・マントラは翻訳不可(そもそもムリだったり)なので、言い換えてしまえばコトバの魂が抜けてしまうというコトだが・・・それは真言に行き着くまでの般若心経の内容を読み解いていけば、自ずと体感出来るようになる世界感ではあるだろう。

「沈黙」という小説を読むに、この世の煉獄が続く。生きながらにして煉獄を通過していくという様に受け取れる。その煉獄は弾圧によってもたらされるが、最たる手法は・・・形式的な手法としての踏絵である・・・〈「形だけ踏めばよいことだ」(沈黙p.219)〉というコトだ。

だが、形というのは案外、大切なものだ。型・形というものは、本来の意味が理解されなくなり、形骸化して継承されていくものだが、一つ一つの所作を、全体の流れの中で捉え直し、自分の肉体という身体と、所作に含まれる身体性に意識を払い、部分と全体の関連を検証する・・・そうすれば、伝承されているカタに内包された問題に、気付くこともあるかもしれない。それを場合によっては“悟り”と呼ぶかもしれない。

「形だけ踏めばよい・・・」とは、案外危険な一言だと思うのだ(記者会見というカタチだけ踏めばよい?それでは民主主義は壊れているのではないかいな?)

 

「煉獄」については当ブログの以下リンクもご覧くだされ!「沈黙」への前座として書いた面もあるのでございます。

etsuro1.hatenablog.com

また、「所作に含まれる身体性」というのも、以前の当ブログでの「茶の本」に関するコトに関わるのだが、とにかく「岡倉天心 茶の本」は、読まれたコトがなければ是非、お勧めでございます。学生の皆さんも、ステイホームでやることないなら良い機会ですな、読んでみて下され!

 

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●本日のお酒

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丹澤山 山廃純米酒 凛峰

4年熟成の山廃純米酒だ。火入れ一回の備前雄町で、仕込29号と30号のブレンドというのは、どの様なことになるのかはワカラン。それぞれがどのような酒だったのか知らないのだからな。

仕込みから4年というのは、ちょっと考えてみれば赤ワインでのありがちな呑み始めタイミングでもあるように思う。2021年時点で、スーパーのワイン陳列棚を見ても、カベルネソーヴィニヨン2017か2018あたりというのが良く見られると思うんですな。まあ、ワインの場合は高級なものでは、もっと長い熟成を必要とするものも多いんだが、日々の暮らしを彩る気軽なワインというのは3~4年モノが多いと思う。買ってからセラーで2年位置いても問題はないワインもあるが、買った時点で案外飲み頃になっているのが2000円前後のワインだな。もう、それ以上は大して熟成は期待できないもんである。

そう考えると、この丹澤山の凛峰・・・まだ飲み頃とは言えず、硬さがかなり残っている。抜栓直後の品温15~20℃程度ではゴリゴリ感が残る。だが、それはワインで言えば若い香味として否定される種類のものではない。この丹澤山は、まだまだ熟成の時を楽しみに待っていても良い酒ですな。

ま、購入した場合は焦らずに時間を掛けて呑んだ方がいいだろうな。一日目は、状態をチェックするつもりで少し味わい、二日目は、前日よりも物腰が少し柔らかくなった香味を楽しみながら燗酒にしてみる。三日目は、さらに開いてきた香味を喜びながら様々な温度で楽しむ。四日目は・・・まだまだ開いていく香味に興味は尽きないのだが、残り僅かの酒を惜しむように楽しむ。そういった感じでワガハイは楽しんだ。

あと1年熟成させると抜栓2日目か3日目あたりの感触からスタートできるかもしれない。そして燗酒が素晴らしかったコトは忘れずに記しておこう。45~50℃に燗つけて、下っていく温度を楽しんでいく呑み方でしたな。かなり綺麗な山廃酒なので、いかにも山廃ヤマハイ的な酒を期待する方には、ちょっと?と思われるかもしれない。だが、速醸モトと違ったより複雑な酸味を求めるならば、相当に綺麗な酸を味わえるお酒だと思いますな。

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裏ラベル

杯をゆっくりと重ねながら、香味空間という虚構空間に身を漂わせ、その鼻腔口腔空間に消えていく香味の響きの先に、キチンと「沈黙」の瞬間があるという体験が出来るのは、やっぱりワガハイの好きな酒ですな。