Etsuro1のブログ

関東南部で寝起きする四捨五入して還暦男の、適当な言語の羅列記録・自称乱学者

綺麗!「杉錦 夏の純米吟醸 山田錦100%」・・・今日は「エタノール資化性酵母」に関する備忘録

昨日の当ブログの記述で、おあずけ状態になった杉錦の純米吟醸だ。

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夏の季節酒

生モト、山廃、菩提モトに酵母無添加など、なかなか攻めの面白い杉井酒造さんなんだが、この「杉錦 夏の純米吟醸」は、極めて常識的な範疇に収まるコンセプトに基づく酒のようだ。そして穏やかに呑める綺麗なお酒になっている。蘊蓄をアレコレ語る必要もなく、しっかりと冷やして夏の吟醸酒を快適に味わう時間が得られた。

日本酒に慣れ親しんでいない方にも、安心してお勧め出来る一本だね!

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マル夏純米吟醸と読むのかな?

このお酒は、香味を抑制した静岡型吟醸という感じだろうか?とても品格のある香味だと思うのだが、それでいて気張らずに普段着感覚でも楽しめるという酒だ。品格のある香味を有する酒の中には、襟首ただして呑まないとまずいかな?といった緊張感が与えられるものもあるからねぇ・・・。

 

これは日本酒全体に対しての話であるが・・・ワガハイは山廃などに好きな酒が多いのだが、ど~にも山廃系が苦手という人も中にはいるだろう。別になんとしても山廃の旨さに目覚めさせようなどという強制は間違っておるので、そういうコトはやらない。だが、純米吟醸・・・つまり吟醸を名乗ったからには香りを求める人というのもおられるな。そういう方からすると期待外れというか、冴えない酒と思ったりするんだろうな。「くぐもった」「野暮ったい」・・・というような記述がネット上に散見される場合もあるからねぇ。

まあ、平成一桁時代ならばプンプンと吟醸香が鼻につく酒がもてはやされていたし、そういう流れの中では如何に綺麗かつ派手な吟醸香を立てるかが競われていた感じもあった。で、そういうのは分かりやすいことではある。日本酒からフルーティーな香りがするというのは意外性であったし、キャッチーであった。もう、アチコチでワイングラスに吟醸酒を注いでグルグル回してクンクン嗅ぎまくって・・・ああ、懐かしいねぇ。あの頃は燗酒なんていうのはダサいって言われたりしたからなぁ・・・ポリポリ

ソムリエの大将も、クルクルまわして「カプロン酸・・・ああ、カプロン酸・・・」って一つ覚えのように連発されてましたな。まあ、それはそれで楽しかったね。

 

でもねぇ・・・吟醸香ってぇヤツは、一歩間違えると怪しい香りでもある。ワガハイなんぞ、ある倉庫の積み上げられた段ボールの片隅から、怪しくも協会9号系の立香に似た漂う空気を感じとったことがあったな。それで、こりゃあ、どこかでカビが発生しておるぞ!というコトになって段ボールを移動していくと・・・ある段ボールに白いカビがビッシリであった。そして匂いの中には確実に協会9号系に似たタッチが漂っていたのだな。

ま、日本酒の香りの正体は、その多くが酵母というカビが産出するものだからねぇ・・・案外、あの段ボールからカビを培養してみたら、イイ酒を造れたかもしれない。そして、その段ボール置き場は適度な温度と湿度があったのだろう・・・いたるところでその白カビが発生しており、急遽アルコールを散布して滅菌対策を講じた。

それは、ちょっとカビが発生してはいけない倉庫(高価な品物の定温保管庫)だったので、その後も何度となくアルコール散布を繰り返したんだそうだ。で、その後にワガハイが伺ってみると、今度は微妙にシンナーに似た臭いが漂っている。まさか間違えてシンナーを散布することなどあり得ないし、そもそも既にシンナーは入手困難であったからねぇ。

「待てよ?これ、酢酸エチルかいな??」

ということで、たぶんアルコール耐性酵母が活動しちゃったのかな?ということで、しっかり換気して湿度を下げて、しばらくはアルコール散布を止めた方がいいよ!と、その倉庫管理者に話しておいた。そして後日、シンナー臭は収まったらしい。結局はから拭きで、マメに掃除することと換気で解決したらしい。

 

※ エタノール資化性酵母という。酢酸エチル臭はパンからも漂うことがあり、Pichia anomalaによる変敗といわれる。この香りは、管理の悪い「ぬか床」からも発生することがある。

 

そういえば、吟醸香がプンプン立ちまくっていた頃、このシンナー臭がガンガン立っていた吟醸酒があったねぇ・・・最近ではそういう酒に出会さなくなったが、たまにそういう酒もあるらしい・・・「そういう臭いがないから呑める」という記述も、ネット上では見られるからな。

そしてシンナーの臭いというのは実際に嗅いだコトがない人達が圧倒的になった現在では、セメダイン臭という言い方もあるようだ。

(ワガハイの世代では、悪ガキどもがまだシンナー遊びなるコトをやって補導された、なんていうのが聞かれたからねぇ。)

それで酒の立香の表現に「セメダイン臭」という言い方が散見されるようになったみたいだねぇ・・・これがまた厄介な表現だ。果たしてそれは酒の香味として望ましい香りなのだろうか?ワガハイ的には望まない香りだな。

 

だがしかし・・・当ブログでも書いた酒から、その「セメダイン臭」がするという記述を見つけた時には、かなり???であった。ワガハイのテースティング結果と全く異なる内容だったからねぇ。まあ、だいたいが「メロンのような香り」とセットになって「セメダイン臭」というのがやってくる。だが、ソモソモその酒からメロン香は出ていないし、使用している酵母からしても、そういう香りにはならんだろうなぁ・・・というワケだ(造りに関しても、問題が生じやすい技法ではなさそう)。

マイナス評価に繋がりかねない表現に対しては、厳密に慎重にテースティングしてなくてはイカンなぁ・・・

 

ついでにワガハイよりも、もっと上の世代の話も記録しておこう(1964 東京オリンピックに向う高度経済成長期の頃)

看板屋さんが大量の看板作るのにシルクスクリーンで刷っていたんだそうだが、その道具の洗浄にシンナーを使っていて、気付くと作業場の換気扇の外で悪ガキどもがヘラヘラしておったそうな。で、一石二鳥だろうというコトで、彼らを招き入れてバイト代払って道具の洗浄を頼んだらしい。実に名案だったと、その人は語っていたが、もうその人と会うこともないからねぇ・・・時代は流れるねぇ。

ま、ワガハイはそこまでシンナー中毒になっておる人を見たコトがないので、ナンともワカランのだが、大変危険な物質なので巷では入手出来なくなったな。そして塗料薄め液なるものが売られるようになって、中身はシンナーではなくなった。すると塗装業(昔はペンキ屋さんとも言った)のオッサンは「ど~もシンナーでないと塗りにくい」と語っていたことがあったねぇ。溶剤として、なかなか優れた特性を持っていたんでしょうな、シンナーというのも。

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裏ラベルですな

まあ、この「杉錦」からはそういった怪しい香りはしないので安心してほしい。HD-1という酵母も、酢酸イソアミル系の香りを生成すると言われるが、とても僅かに品良く感じられる程度の立香だ。それがまた物腰の柔和さを演出してくれますな。そしてこのHD-1のタッチというのが感じられると、やっぱり杉錦は静岡の酒なんだなぁ・・・と思いますな。それだげ静岡型吟醸というスタイルが、ワガハイの感覚に擦り込まれているというコトでもあるんだろうな。

贅沢な造りですぞ!

 

兵庫県山田錦100%

精米歩合:麹米40%大吟醸レベル!)掛米50%

 

なんだか杉井さんとの会話が想像出来てしまうな。

ワガハイ:「綺麗な酒でしたねぇ!」

杉井さん(想定):「そりゃあそうだろう、そういう風に造ったからなぁ・・・」

と・・・これでおしまい。そうしてニコニコしておられる。何度か蔵に伺った際に繰り返された問答である。

コロナ禍でなければ、藤枝の蔵を訪ねたいという思いは強うございます。杉井さん、いつも旨酒ありがとう!