酒販店の冷蔵庫を覗くと、「生酒」シールが貼られた一升瓶が並んでいる。特に今の季節は次々と新酒生酒が出荷されるから、出向く度に新しい生酒を目にする。
実に悩ましい・・・
何故ならまだまだ寒いから、今夜は熱燗でぬくぬくと楽しもうではないか!と、堅く誓って酒販店にやって来た筈なのに、「生酒」の魅力に予定変更を余儀なくされる。実に優柔不断であり、意志薄弱であり、根性のない我が身を思い知ることになる。
やっぱり、この季節のお酒はこの季節に呑まないと・・・と思う。旬だからねぇ。
ならば始めから「生酒」買いに行くぞ!と、燗酒の魅力に負けなければいいのである。つまり、我が飲酒の欲望は・・・フレッシュな生酒を呑みたい!というのが正直なココロなのだ。
ウソはつけない。燗酒は既に、真夏での美味さに気付いているのだから、寒いからといって燗酒を呑む必要などないのだ。風呂で温まって、暖房の効いた部屋で「生酒」を頂くという至福な時間は、やっぱりこの時季だからこそ楽しめるのだから。
以上、老人のココロの葛藤の様子であった。
この一升瓶には裏ラベルの貼付はない。以下リンク先の酒蔵のサイトでは「春の食材と合わせやすい・・・」と書かれている。そして詳細なスペックの公表はない。
抜栓する前から期待は高まる。レギュラー神亀もご無沙汰だが、かれこれ30年前から呑んでいるだけに、常に信頼の品質で楽しませてもらっている。神亀の生酒といえば、純米活性酒の思い出が多いのだが、今回のモノは、実は始めて呑む。
期待以上だった。
その香味は、ワガハイ好みではない。好み的にはもう少し酸があった方が良いし、その酸の質は既に速醸酛の酸では物足りないのだ。やっぱり上手に醸された生酛山廃系の酒を呑み慣れているためか、ついついあと少しの綺麗な酸を欲してしまう。
だが、それならば我が定番の「北島」や「杉錦」を購入すれば良いのだ。今回は「神亀」なのだ。このお酒の特徴をしっかりと楽しもう。その様に気持ちを切り替えて呑む。すると、神亀の印象からすれば穏やかさを持った、まろみさえ感ずる美酒だ。
新酒らしい荒さも少しだけ顔を出すが、そのエグ味はあと残りしない。味わいに良い立体感を与えてくれる。このバランスがないと、新潟県の圧倒的有名ブランドの新酒と大して変わらない味わいになってしまう。もっとも神亀の方が濃醇ではあるが。
蔵元としては、新酒で提供する前提で「華吹雪」という米を用いたのだろうか。この米についてワガハイは知るトコロが少ないのだけれど、印象としては柔和な傾向の香味の酒が幾つかあったと記憶している。
まあ、神亀も長期熟成に耐える純米酒を、長いコト造り続けてきた蔵だから、その酒質は案外硬めだ。それを直球勝負で生酒出荷ではなく、「華吹雪」なんだろう。
イイ感じ!
これはこの季節に一回は楽しみたいお酒。
多くの方に、生酒の楽しさが伝わる香味だなぁ。
自分好みの酒ではないけれど、今シーズンもう一回、購入の機会があったら買うことにしよう。ご近所の酒販店で購入したワケではないから。
とにかく、品質に信頼のおける酒蔵のお仕事だけに安心して購入出来るし、「神亀」を扱っている酒販店は、やっぱり手練れだから。他のラインナップにも、触発される酒が並んでいるモンだ。
今さら「神亀」のコトを多く語る必要もないと思う。だが、一度も呑んだコトのない方は、見つけたら絶対に購入すべし!まずはレギュラー神亀(以下リンク)でイイのだ。