久しぶりに居酒屋など外食で飲酒して、救急搬送される事例があるという。そんなコトがどうして起るのだろうか?テレビニュースでの話では、飲む量の加減が掴めなくなった、というような話があった。友人と飲むことで盛り上がってしまった・・・というコトもあるんだろう。なんか嬉しくて酒が進んじゃったんだろうか?
だが、コロナ禍以前でも急性アルコール中毒で搬送という話は、特に年末にはあった。ワガハイとて、飲酒の件で救急車のお世話になったコトはないが(交通事故では一回ある)、二日酔いの経験は若い頃にはあった。歳を重ねてくると、二日酔いというコトは無くなった。勿論、三日酔いもない。
自分の経験からすれば、酒呑みの先輩達が語っていた内容と同じになるが、若い頃は酒との付き合い方が下手で、酒の味わい方を知らないというコトになる。それは、酒の味を利酒としてではなく、滋味深く染み入るように呑む時間を楽しむコトを・・・知らない、いや、若いときは必要としていない、んだろう(ま、酒呑む理由も人それぞれだろうが・・・やけ酒ならアルコール入ってりゃ、何でもイイだろうしなぁ・・・酒への興味度もいろいろだろうからな)。
単純に味覚や嗅覚のセンサーとしての感度は、若い頃の方が優れている筈だ。だから利酒(テースティング)の力というのは、とりあえずだがセンサーの鋭敏さに関しては老人の出る幕は無い筈である。だが、センサーの感度が高くても、それを処理する脳ってぇヤツは、経験の蓄積(学習)と照らし合わせて受け止めるコトによって感じたコトになるのだから、やっぱり適当に脳力とセンサー感度の良い塩梅っていう年頃はあるんだろう。
その良い塩梅の年頃に関しては、ワガハイはもう圧倒的に下り坂になっていると実感する今日この頃だ。老眼が進むのと同じように、味覚も嗅覚も衰えていくもんである。脳ミソの衰えはそれ以上だな。
だが、滋味深く染み入るように呑む時間を楽しむ経験は、老いるほどに充実度は増していると感ずる。そして杯を重ねる度に「日本酒は美味すぎる!」と思ってしまう。美味すぎるモノは、ホドホドに味わうのが正しい。決してがぶ飲みする飲料ではない。
ワガハイ、中年オジサンになって以降は、とりあえず乾杯!といってビールジョッキというスタイルが自分に合わなくなったコトに気付いた。そもそも乾杯という習慣に、あまり乗り気ではなくなった。最初から日本酒をチビチビと、仲間と酌み交わすというのが、自分に最適のスタイルとなった。
他者にも、その自分流のスタイルを押しつける気は無かったが、割とワガハイの関わる呑兵衛は、はじめから日本酒をオーダーするワガハイを見て同感してくれた(まあ、これだとビール会社は上がったりだが)。考えてみれば、そういった仲間は全てワイン呑みだったねぇ。「最初にビールをガボッと飲んじゃうと、ワインの味がねぇ・・・」っていう人達だったんだな。で、それは「日本酒でも同じ」ということだ。
昭和の終わり頃から平成のヒトケタ辺りの日本酒っていうのは、次世代の日本酒への試行錯誤が多かったと思う。吟醸酒や純米酒市場の広がりはじめだな。少しずつ一般にも知られるようになってきた時代だ。ワガハイの二十代は、街中の酒販店に行っても、吟醸酒など売られていなかった。棚には大手酒造メーカーの一升瓶が並んでいるだけだった。余程凝った酒販店を探さないと、吟醸酒も純米酒も入手出来なかった。
今でも、生産量の少ない小規模の酒蔵が醸す酒は、地元の酒販店に飛び込んでも入手出来るとは限らない。極限られた酒販店に行くと、ドパ~ッ!とお目当ての酒が並んでいるケドね。逆にそうしたお店では、大手酒造メーカーの一升瓶など見かけることがない。まあ、両極に振れるんですな。
そして当ブログで度々書く、神奈川県山北町の川西屋酒造店(丹沢山・隆)も、地元であってもポイントを外したら全く見かけることの無いお酒だ。だから都内在住の知人には、時々「丹沢山」など贈り物にしていた。コロナ禍で一緒に酌み交わすことが出来ないから、せめて「丹沢山」でも呑んで楽しい時間を過ごしてくれぃ!という思いと、僅かながらの酒蔵支援の気持ちである(酒に限らす、こういう人、きっと多いだろうなぁ)。
そして当ブログで丹沢山といったら、度々「ラベルが結露に弱い」と書いてきた。そしてそんなコトは、酒を大切に扱う酒販店ならば・・・上画像のようにラベルをフィルムで覆ったりして冷蔵庫に収納している。まあ、環境問題を言い出すと、そんなコトはしない方が良いんだろうが・・・だが、やっぱり商品である以上、姿が乱れるというのは好ましくないというコトなんだな。これは凹んだ缶詰が値引きされるみたいなもんで、ラベル汚れでワゴンセールに並ぶワインなんてぇヤツは、ワガハイの好物なんだけどね。
でもとにかく、どうせ買うなら酒を大切に扱う酒販店に行きたいもんである。
今回購入したのは、今春に呑んだ無濾過生原酒の火入れバージョンである。以下リンク先もあわせてご覧くだされ!あまりの美味さに2本購入したのだった(そして酒蔵としても23号はとても好評だったという話だ)。
以下画像を見ての通り、一升瓶にフィルム巻いても、フィルムと瓶の間に結露した水が滲んで濡れますな。でも、川西屋酒造最大にして唯一の欠点である裏ラベルが、グズグズにはならずに済んでいますな。
無濾過生原酒がアルコール度19に対して火入れは15度。日本酒度も+10から+9、酸度は1.8から1.4になっている。火入れ酒でも「要冷蔵保存」と表示されているのは、たぶん一回火入れなのかなぁ・・・安全策だが、香味の安定を考慮すれば室温放置は不完全な環境だからな。
そうそう!案外冬は暖房使うから、酒の室内放置は気をつけて!裏ラベル表示の確認を忘れずに。
香味はさすが仕込23号である。抜栓直後は硬いが、程なく開きはじめた。まあ、冷蔵保管していると、そのままでは飲用温度としては低すぎるコトもあるな。ちょっとだけ温めてようやく室温の酒となる。だが、最大のパフォーマンスを発揮したのは、抜栓3日目の熱燗であった!基本、全温度帯OKな酒だが、丹沢山も隆も、火入れ酒の熱燗耐性は最強の部類だろうなぁ・・・熱々もイイが燗冷ましがまた美味だ。むしろ燗冷ましを味わう為に燗付けている面もある。
若水という酒米が、山田錦とは異なった味わいを生み出してくれるから、こういう美味さの多様性・個性を確保する点でも、「若水」で造られたお酒の存在は重要だ。いやぁ~「若水」って米は、たぶん難しい米なんだと思うなぁ。「???」っていう酒が多いからなぁ。その点、長年「若水」を用いている川西屋酒造店のお仕事は、使いこなしが上手なんだろう。
ユックリと味わう日本酒の飲用スタイルならば、急性アルコール中毒で救急搬送されるコトもないだろう。「ああ、日本酒!美味すぎる!こんなイイもの勿体ない・・・」って感じながら呑んでいれば、自然と呑むピッチも遅くなるだろう。こういうお酒は、大勢でワイワイ呑む向きの酒ではないと思うんですな。